お金を使うのが怖い風俗嬢の話。

4年くらい前に取材で出会ったソープ嬢のIちゃんの話。(ちなみにそれ以来すごく仲良し。卒業済で現在は主婦)

 

 

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Iちゃんがら22歳で風俗業界を選んだのは、選択肢がそれしかなかったから。

彼女は持病が3つあり、長時間の労働が厳しかった。最終学歴は高校中退で、頼れるのは2つ上の兄だけだが、兄は結婚して家庭を持っていたため甘えることは出来なかった。

 

いろんな制度があるのかもしれないが、それすら知らない。でも、10代から働いていた工場が潰れ、東京にひとりぼっちの彼女は生活するために働かなければいけなかった。

 

いつもは無視する渋谷のキャッチで、すごく気の優しそうな男の子と出会った。その子の紹介で、Iちゃんはヘルスデビューをする。

家賃、携帯代すら滞納していた彼女からしたら、日払いで貰える4万円の初めてのお給料は夢のようだった。

 

数日働くだけで、ちょこちょこしていた借金を完済し、生活費を稼ぐためソープへ移ることに。

最初こそガムシャラで病むことすらなく働いていた。

しかし、月に80万円を超える収入を手にするようになってから、Iちゃんはある事に気付いた。

 

 

工場で手取り17万円を貰っていた頃よりも遥かに金銭面が豊かになったはずなのに、あの頃よりも贅沢が出来ていない、という事に。

 

Iちゃんは2日で少なくても7万円は稼ぐ。

5日働けば、ハイブランドのバッグが買えるはずだが、彼女は買えないと言う。

 

「35万円稼ぐのに自分がどれだけ我慢して嫌な思いしたかを考えると、使うのが怖い。使うと、またあの嫌な思いをしなきゃいけないと思うと使えない」

それだけじゃなく、「必需品でも我慢出来るものは買いたくない、お金を使うのが怖い」

と言った。

彼女はとにかく今の仕事が向いていなかったのだ。苦痛で苦痛で仕方なかった。

 

貯金残高はどんどん増えていくのに、彼女の心はどんどん貧しくなっていた。

 

(これは風俗だから、というのではなく、自分が心底嫌だと思う仕事であるということ。人それぞれその仕事は違う。)

 

 

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この取材の一年後、Iちゃんはソープ嬢を引退して結婚していた。

生活費は月に5万円、自分のお小遣いは1万円の主婦。

「金額的にはかなり減ったけど、必要なものを気持ちよく買えるようになった。彼や家族のためを考えてお金を使えるようになったし、減る不安が無くなった。必要不必要なものもハッキリした」と言っていた。

 

 

以前と数字だけ見て比べると少なくなったように感じるけれど、彼女の心はとても豊かになっていた。

 

 

私は彼女から、〝心が貧しいと、物質的にどれほど豊かになっても本当の意味で裕福にはなれない〟ということを学ばせてもらった。

 

好きなことをやると豊かになる、というのはこういう事からも言えるのではないかと。

どんな時でも、自分の心を無視してはいけない。

 

 

好きなことをしようというより

 

まず、嫌な事をやめよう。

自分の心を豊かにするために。